小高い丘の上に、小さな建物がひとつ。
とても見晴らしのいい場所なのに、空は曇っていて肌寒い風が吹いている。
足元の細い草がざわざわと音を立て、私は突然不安になった。
『おかあさん……』
建物の中にいる母親を求めて歩きだす。
白塗りの壁と、色のついた屋根。
建物にドアはなく、大人がひとり登れるくらいの階段がある。
上の方は少し明るい。
1段ずつ登っていくと、次第にピアノの音が聴こえてくる。
辿り着いた部屋の奥にはスタンドピアノが置いてあり、真っ黒い魔女が椅子に座って【トルコ行進曲】を弾いていた。
硝子のはまっていない窓から外の風が吹き込んできて、魔女のマントを揺らす。
ばらのりのように形が定まらず、綺麗だけど軽そうな布でできたマントは、森の木々のように揺れている。
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……という夢を見たのが幼稚園の頃。
この夢は成人して久しい今となっても、まるでさっき見た光景のように思い出せます。
これは多分、私が起床時に記憶していた“はじめての怖い夢”なのです。
これのせいで【トルコ行進曲】がトラウマとなり、幼少期に町中で耳にしては泣いていました。
母親と親友の3人でタクシーに乗って出かけた際に、親友が【トルコ行進曲】を歌いながら変顔をして励まそうとしてくれたこともよく覚えています。
結局、克服できることはなく、大人になった今でも【トルコ行進曲】に対してホラーな印象を強く抱いています。
どんなに「華やかで明るく軽快なメロディ」と説明されても全くそう思えないので、人間の感覚というのは不思議ですね。
ちなみにこの部屋、別の怖い夢にも登場しました。
私がひとりで絵本を読んでいると、眠ってしまうのです。
そして最初は普通の夢を見るけれど、途中から段々と怖い夢になっていきます。
ハッと目を覚ますと、絵本のページが風でめくられて怖いページになっていました。
私は硝子のはまっていない窓を見上げ、楽しいページを開きます。
でもまた眠ってしまい、また夢の内容が段々と怖いものになっていく。
ハッと目を覚ますと、絵本のページが風でめくられて怖いページになっている。
これを何度も繰り返すという夢でした。
この夢は、魔女の夢を見た頃から小学生の中学年くらいまで何度か見ていました。
おかげさまで怖い夢を見た時に起きるコツのようなものを覚え、夢の中でこれは夢だと認識さえすれば自力で脱出できるようになったのです。
13.魔女の夢と絵本の夢
夢日記

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