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17.お金持ちの道楽

お金

知人の家の近くに、“金持ちが道楽でやっている店”というのが存在します。
 
知人曰く、「あれは金持ちのオーナーが余った土地を使って道楽でやっている店だから、儲けがなくても全然やっていけるんだよ」とのこと。
 
はじめて聞いたときは、酷い言われようだと思いました。
 
ですが、その言葉は本当だったのだと近年感じています。
 
 
 
 
私がその話を聞いたとき、そこはタピオカ屋さんでした。
 
当時、タピオカは別にもう流行っていなかったと思います。
 
ですが、そんな世間の流れに逆行するかのように可愛らしくポップな外装で、たくさんの種類のタピオカドリンクを売っていました。
 
一度食べてみたいと私が言うと、知人は「美味しくないって噂だよ」と笑っていました。
 
それでも、ものは試しだと思っていたのですが、私の願いが叶うことはありませんでした。
 
 
 
 
次にその店の前を通ったとき、そこはイケイケのバーに変貌していたのです。
 
時刻が遅かったこともあり、その店は周囲の店や住宅の明かりを消し飛ばす勢いで発光していました。
 
『苦情とか来ないんだろうか』
 
いらぬ心配をしてしまうほど派手な店の誕生に私は足を止め、しばし呆然としてしまいました。
 
 
 
 
次にその店の近くを通りかかると、今度はエキゾチックな音楽が聴こえてきます。
 
バーの音楽かと思いきや、なんとそこにはエスニック料理店が誕生していました。
 
アジアン系の衣装に身を包んだおねーさんたちが店の前でチラシを配っており、独特な雰囲気を醸し出しています。
 
前回のバーと比べると若干落ち着いた雰囲気だけれど、周囲の街並みからは浮きに浮きまくっていました。
 
試しに食事でもしにいこうか、と知人と話していたのですが、我々の願いはまたしても叶わないのです。
 
 
 
 
次にその店の前を通りかかると、そこはなにやらスポーツの個別指導塾になっていました。
 
通りの向こうから店内を覗いてみると、これまでの飲食系とは一変して、カウンターが消え、巨大な鏡が出現しています。
 
オーナーに一体何があったのか。
 
トレーナーたちを一体どこから迎えたのか。
 
これには、普段からトレーニングジムに通う知人もちょっと色めき立ち、体験に行ってみようと身を乗り出していました。
 
しかし、そんな願いは叶うはずもなかったのです。
 
 
 
 
先日、友人宅を訪れた際に結局体験に行ったのかと尋ねると、ゆっくりと首を横に振られました。
 
駅から友人宅へ向かう道中、件の店が近づいてきます。
 
そこでは、作業着姿の方々が忙しそうにお仕事をされていました。
 
店の看板を貼り替えるお仕事を…………
 
次は、一体何のお店になるのでしょうか。
 
 
 
 
お金持ちにとっての起業や経営は、私にとってのソシャゲやコラボカフェ通いなのでしょう。
 
遊びだから、儲からなくても一向に構わないのです。
 
普通の人が起業すると、失敗すなわち人生の詰みとなってしまう可能性もあるけれど、お金があれば「ダメなら次」「飽きたら次」と切り替えていける。
 
残念ながら私がどんなにお金を貯めても、そこまでの境地に至るのは難しいと思うのですが。
 
お金持ちの感覚というのは、一般庶民には全くわからないものだと感じる出来事でした。

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