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171.ポケモンゲームの想い出

推し活

〜「同時多発的な旅の始まり」というロマン〜
 
 
 
「世界中のポケモントレーナーが、その日、同時に新しい旅を始めるんだよ!」
 
10年と少し前、夜の繁華街でのこと。
 
隣を歩いていた同期が拳をかたく握り締め、声を弾ませました。
 
連勤最終日。
 
お好み焼き屋に向かう道中で、彼女が休日の予定を語りだしたのが事の始まり。
 
なんでも明日、ポケモンの新しいゲームが出るとかで。
 
発売日の早朝に、かなり気合を入れて店頭に並ぶとのこと。
 
Twitter(現X)やネットニュースで度々話題になる発売日の行列の参加者がこんな身近にいたことに、私は内心しみじみと驚いていました。
 
ふんふんと相槌を打っていただけなのに、いつの間にか彼女のボルテージは上昇し、冒頭の台詞に至ったのです。
 
 
 
 
仕事の疲労感を力技で吹き飛ばすような彼女の勢いに、私は若干引きつつも視線を向けました。
 
「いいね、そういうの」
 
正直なところ、それまで私はゲームの発売日に店舗に並ぶ行動の意味がわからないと感じていました。
 
『ネットで予約すればいいのでは?』とか。
 
『どうせゲームできるのなんて休日なんだから、後日でもいいのでは?』とか。
 
そんなふうに考えていたのです。
 
しかし、同期のキラキラと輝く表情を前にすれば、私の考えは愚論だと言わざるを得ません。
 
彼女の前に広がる旅路が、私にも少しだけ見えたような気がしました。
 
「でしょ!」
 
誘うわけでもなく、勧めるわけでもなく彼女は笑います。
 
自分にはわからない世界でも、こうやって誰かの“好き”に触れられるのは幸せなことだと感じました。
 
 
 
 
そんな遠い記憶を、ふと思い出したので書き留めておきます。
 
私自身も、子どもの頃はゲームボーイでピカチュウを連れ、ポケモンマスターを目指していました。
 
けれども、彼女のように考えたことはありません。
 
旅は一つで充分だと思っていたので、続編の購入を検討したこともありませんでした。
 
ですが、大人になって、視野が広がってから触れることで、また違った視点で好きな世界を楽しむことができるのでしょう。
 
同期とのエピソード以降、帰省したときに少しだけゲームボーイを起動してみました。
 
20年以上前にプレイしていたゲームなのに、操作方法など覚えているものですね。
 
せっかくピカチュウを連れて歩けるのに、ほぼ自転車かピジョットかラプラスに乗って旅をしていたような……
 
次に帰省したら、東京の部屋に持ち帰ろうと思っています。
 
別にプレイするわけではないけれど、たまに見て懐かしみたい気分なので。

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